2019年6月11日

電子書籍の危うさ

『小学館少年コミックス』というアプリのサービスが終了して、購入したコミックが読めなくなってしまったというツイートを目にしました。

またか……



かつて、小学館の電子書籍アプリに『図鑑NEO for iPhone』という図鑑アプリシリーズがありました。

約200種の蝶を収録、観察ノート機能も――「図鑑NEO for iPhone 日本のチョウ」』(ITMedia 2009年08月21日)

まだApp Store黎明期と言っていい頃で、タッチパネルを活かした操作とグラフィカルな表示は、紙の書籍にはない新しい感覚で話題になりました。
私もお気に入りのアプリだったのですが、確かiPhone 5の表示にも対応されることなく、そのうち起動すらできなくなり使えなくなってしまいました。
当然、64bit化されることもなく、iOS 11の32bitアプリ切り捨てで完全に使えなくなりました。

このアプリの価格が800円。『蝶』『甲虫』『セミ』とリリースされた3つすべて購入しました。
まあ、リリース記念とかのセール価格で購入していた憶えがあるので、そこまで高くはないのですが、それでも450円とか600円くらいはしたでしょう。


もう一つ、小学館。
『デジタル大辞泉』という国語辞典のアプリがありました。
リリース当時は、物書堂の『大辞林』と比肩するような存在だったと記憶しています。
このアプリもまた、アップデートの更新が止まり、64bit化されることなく使えなくなってしまったので削除しました。

しかし、こちらは開発元がアプリを引き継ぎ(でいいのかな?)、再び使えるようにしてくれたようです。
小学館版を購入していた人は、ダウンロードできるようになっています。

ゲームやユーティリティとか他のカテゴリーのアプリでも、有料で購入したのに使えなくなったアプリはあります。
それらと電子書籍が違うのは、紙という他の媒体が存在しているということ。
紙の書籍で購入していたなら、保管状況にもよりますが今でも読むことができていたのです。

電子書籍は、配信側の都合で、いつ読めなくなってもおかしくありません。
そのことは利用規約に記載されているのでしょうし、ユーザーも認識していなければならないことでしょう。
しかし、大手の出版社が、なんの救済処置もなく、こうもやすやすと見限ってしまうものなのかと、憤りを覚えます。


小学館ではないのですが、iPad登場当初に配信された『妖鬼化』という電子書籍アプリがありました。

水木しげる渾身の妖怪原画集『妖鬼化(ムジャラ)』、iPad版が発売開始』(マイナビニュース 2010/07/25)

水木しげるの妖怪百科みたいなアプリで、1冊1,200円で全7巻。
コンプリートしました。

しかし、これもまた、Retinaディズプレイにすら対応することなく使えなくなってしまいました。
幸い、このアプリは初代iPadに残っていたので、今も読むことができています。

初代iPadは、iOSのアップデートが5.1.1で止まったので古いアプリも開くことができるのです。(すべてのアプリではありません)
初代iPadでなくても、最新のOSで再インストールすらできなくなったアプリも、OSのアップデートが止まった古い端末なら見ることができる可能性があります。
ただし、インストールできても起動できなかったり、そもそもApp Storeの購入済みにも表れなくなってしまったアプリもありますが。


では、自炊なら大丈夫か?
確かに元データは、自分自身がきちんと管理している限り、読めなくなることはないでしょう。
しかし、私は自炊の電子書籍でも泣いたことがありまして。
自炊した書籍を読むためのリーダーアプリが、64bit化されずに使えなくなってしまったのです。
自炊した書籍自体は、他のリーダーアプリを使って読めるようにしたのですが、それまで積み重ねてきたアノテーションや手書きメモやらはすべて消え去りました。


なんだか、厄介なことばかりのように思えますが、だからといって、電子書籍の購入をやめたわけではありません。
物書堂のように、App Store開始当初からのアプリを、いまだに最新の端末に合わせてアップデートしてくれるところもありますし、保管場所を取らない、分厚い本を持ち歩かなくてもどこでも読める、ためらうことなく線を引いたりメモを書き込めるといった利便性は、やはり電子書籍ならではです。

レコードのように、紙の書籍を購入したらデジタル版をダウンロードできるコードが付いている……とかしてくれると一番いいのですが。

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